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秋の夜はビールを飲みつつ本をたしなんで。秋の夜長にぴったりな本5つ。

秋にはどんな本が合うだろうかと考える。

窓をすこし開けておくぐらいが丁度いい秋の夜に、お気に入りのクラフトビールを飲みながら読む本は、どういうものがいいだろうか?と。

全く疲れてしまう重厚なものから、眠気を誘う難解なものまで、一つとして同じものの無い本の世界から、地下水脈のように流れる共通項を探りだし、その糸に吊るされた本を紹介するのは、ともすればこじつけの入ってしまう仕事になる。

ところが、そんな難儀な仕事を脇に置き、秋風がするすると遊びにくる夜に読みたい本はなんだろうか?と考えると、いやに簡単に候補が見つかった。

今回は、そんなような、ビールを片手に楽しんでほしい、読書の秋に浸れる小説を5つ紹介する。

 

ここは退屈迎えに来て / 山内マリコ

 


内容(「BOOK」データベースより)

地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、「R‐18文学賞」読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」を含む連作小説集。


 

仕事や夢のためであるとか、地元のつまらなさに辟易してだとか、多くの人が東京を目指すものだから、水をいれすぎた風船のように、東京がぷっくり膨れているように見える。

いつしか上京した理由を忘れ、都会での消耗戦に耐え切れなくなって地元に戻る人は、お話の世界にも現実にも大勢いる。

そうした出戻りを経験し、錆色ばかりの地元にあって、自らの将来に閉塞感を感じる女性を主人公とした一編からなる、八つの短編を収録しているのが本作。

退屈に侵される我が身をわかりつつも、ゆるやかな退廃に見を委ねる心地よさに半身浴している登場人物たちの姿には、読んでいるこちらをある雰囲気で包む不思議な引力がある。それが、秋の夜に読みたいと思わせる理由だろうかな。

この本にはゆっくり飲めるビールが合うということで、オススメはこちら。

しっぽり飲みたい、秋のおこもりビール2つ。「グランドキリン 十六夜の月」 「まろやかエール」

 

三島由紀夫レター教室 / 三島由紀夫

 


内容(「BOOK」データベースより)

職業も年齢も異なる5人の登場人物が繰りひろげるさまざまな出来事をすべて手紙形式で表現した異色小説。恋したりフラレたり、金を借りたり断わられたり、あざけり合ったり、憎み合ったりと、もつれた糸がこんがらかって…。山本容子のオシヤレな挿画を添えて、手紙を書くのが苦手なあなたに贈る枠な文例集。


 

初めて呼んだ三島由紀夫の本は、映画にもなった「春の雪」で、それから、続く三作からなる「豊饒の海」四部作をえらく往生して読み遂げた。

それ以来、そのきらびやかな文体に惹かれて、他の著作も読むようになった。

その中には、三島由紀夫の文体に対して抱いていたイメージを覆される、軽妙洒脱なものもあり、それはそれで新発見として楽しい。

この「三島由紀夫レター教室」もその類の作品で、五人の登場人物が交わす手紙のみで進められる。

 

個人的に、歴史的な偉人や芸術家の手紙が博物館やなんかで展示されているのを見る度、「やめたげなよ(笑)」と思う。手紙という密室に閉じ込められたパーソナルな部分を公開しているということだから。

大抵の場合、手紙には受け手がいるにも関わらず、手紙それ自体はパーソナルな雰囲気を纏っているのはどうしてだろう?

手紙が相手ありきということ自体、仮面なのかもしれない。実は、手紙とは壮大な独白で、だとすれば、この本の五人はそれぞれ独白を投げ合っているということになる。おかしいおかしい。

 

おかしいけれど、三島由紀夫一流の文章術は、五人それぞれの文体に異なった性格を与えながら、ライティングのお手本とも言える美しい文章を通底させるということに成功している。

だから、五人の交わす手紙のおかしさを楽しむのはもちろん、ある種の文章教本としても味わえるからオススメしたい。そしてそのときは、軽快かつ洒落っ気のあるこの本に合った、Lemon Beerをお供にするのがいいだろうな。

ビール嫌いな女子たちへ。おすすめフレーバービール「Lemon Beer(レモンビール)」

 

白いメリーさん / 中島らも

 


内容(「BOOK」データベースより)

まっ白な帽子に白いスーツ、白いストッキングに白いハイヒール。髪もまっ白という「白いメリーさん」。誰を殺してもいいという年に一度の「日の出通り商店街いきいきデー」―など、怖すぎて、おもしろすぎる9編を集めた珠玉の短編集。ナニワの奇才・中島らものユニークな世界に思わず引き込まれる一冊。


 

コピーライターであり、小説家であり、酔って階段で転んで死んだという伝説の男 中島らもの短篇集。

世にも奇妙な物語のように、読者の中にひっかかって残る小骨を持った作品が並ぶ。

 

ひっかかりのある作品こそ名作だと思っている。

例えば、SF小説はその技術が現実にあるとして、自分はどう使うだろうか?とか、作品のその後はどうなるだろうか?、あるいは作品から問いかけてくることへの答えを考えるでもいい。

何らかのひっかかりがあるほど、その作品を消化する楽しみができるから、これは裏を返せば、ひっかかりなく速やかに消化される作品は、自分にとってその程度だったということでもある。

そんなひっかかりを、簡単な言葉でもって次々に私たちの中心に作っていく中島らもの見事な仕事は、コピーライターをやっていたところが影響しているのかもしれない。

是非、表題作の「白いメリーさん」を読んで、「全体、白いメリーさんってなんだったのかしら?」と考えたあなたの答えを聞かせてほしい。

 

「白いメリーさん」だけに、白ビールを合わせるというギャグにもならないギャグはともかく、このヴェイツェンが合いますよ。

まろやかな秋ビールはドイツから。「フランツィスカーナー へーフェ ヴァイスビア」

 

蝉しぐれ / 藤沢周平

 


内容(「BOOK」データベースより)

清流とゆたかな木立にかこまれた城下組屋敷。普請組跡とり牧文四郎は剣の修業に余念ない。淡い恋、友情、そして非運と忍苦。苛烈な運命に翻弄されつつ成長してゆく少年藩士の姿を、精気溢れる文章で描きだす待望久しい長篇傑作! –このテキストは、単行本版に関連付けられています。


 

主人公の牧文四郎の成長が描かれる。

文四郎が少年のときからお話は始まり、父親が政変に巻き込まれたり、実力で出生をしたりといったエピソードを交え、三十年間が描かれる。

 

文四郎の人生を彩るのは、少年時代に離れ離れになってしまったお福という女の子への秘めた恋心。

お福に想いを伝えられなかった後悔が、少年時代のその他の思い出たちとワンパッケージになっており、彼がこれを抱えて生きていく切なさが感じられる。

その切なさは藤沢周平の静かな文体によって一層引き立ち、彼の腹の底でしたたかに根を張る慕情を我が身のように感じられる。

 

寒くなると人肌恋しくなるとはよく言うとおり、秋には切ない小説が似合う。

黒ビールなんかのクラフトビールの深いコクを楽しみながら、この蝉しぐれを読めば、繊細で美しい切なさを味わえるはず。

オクトーバーフェストの王様は、世界初の黒ビールだった。「ホフブロイ ドゥンケル」

花粉症に効く!豆乳担々麺に合うクラフトビール「箕面ビール スタウト」

 

のろのろ歩け / 中島京子

 


内容(「BOOK」データベースより)

『北京の春の白い服』―1999年、中国初のファッション誌創刊に向けて派遣され北京で奔走する夏美。『時間の向こうの一週間』―2012年の上海、赴任したばかりで多忙な夫の代わりに家探しを引き受けた亜矢子。『天燈幸福』―「台湾に三人おじさんがいるのよ」という亡き母の言葉を手がかりに旅に出た美雨。時間も、距離も越えて、新しい扉をひらく彼女たちの物語。


 

ぶんぶんに汗をかいていた活動の夏を尻目に、秋はなんだかセンシティブで内省的になる。

学校、会社、将来、恋人、家族など、人によって対象は違えど、新しい年を迎えるまでに残った僅かな時間のうちに、この一年やこれまでの生活のことについて考えなおすのはとても素敵なことだと思う。

「のろのろ歩け」に出てくる女性たちもまた、目の前の生活を必死にサーフしてきて、ふと立ち止まる。あるいは、走りながら止まる。

立ち止まった彼女たちが考えるのは、ボーイフレンドや仕事のこと、今自分がいる地点のこと。このお話に救いを感じる点は、そのそれぞれに対して変に悲観的にならず、あっけらかんとしているところにある。この態度は最初に紹介した「ここは退屈迎えに来て」にも通じていて、しなやかなユーモアのセンスを備えた強さを感じる。こうありたいものだ。

イギリスのバス ペールエールを飲みながら、これからの生活に少しの元気を貰える「のろのろ歩け」を是非読んでみてほしい。

マネやピカソも愛したイギリスを代表するエールビール。「バス ペールエール」

 

 

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